2008年10月24日

024【全国社会人】「実りの秋を越えて」(第44回全国社会人サッカー選手権大会(トキめき新潟国体サッカー競技リハーサル大会)/10月17日〜22日/東北電力ビックスワンスタジアムほか)

 10月18日から22日にかけて、新潟県内で5試合が行われた全国社会人サッカー選手権大会(通称:全社)。試合数が多く、大会終了から日がたっているため、一試合づつのレポートではなく総括という形で今大会を振り返えっていきたい。

 優勝は北信越1部でも優勝したAC長野パルセイロ、準優勝に東北1部2位のNECトーキンが輝いた全社だが、今大会より行われた3位決定戦で勝利した九州3位のホンダロックが3位、北信越1部4位の松本山雅が4位となった。

 全社は一昨年よりその立ち位置を大きく変えた。それまでは優勝しても名誉のみが与えられる大会だったが、秋田県で行われた第42回大会より優勝、もしくは準優勝チームに全国地域リーグ決勝大会(通称:地域決勝)への出場権が与えられるようになった。
 さらに今季より、3位以内のチームから上位2チームまでに地域決勝への切符が与えられる。
 このことにより、各地域リーグでの地域決勝出場権を得られなかったJFL以上を目指すチームにとって、全社は敗者復活戦の様相を呈してきた。現に第42回大会では静岡FCが、第43回大会ではMIOびわこ草津がそれぞれ全社から地域決勝へ進出している。
 今大会でもホンダロック、Y.S.C.C.、NECトーキン、JSC、松本山雅などが敗者復活を期し、大会へ臨んだ。


 一方、地域決勝への出場権をすでに獲得しているチームにとっての地域決勝は、対戦経験の浅い他地域のチームとの練習試合という側面も持つ。また、決勝ラウンドが石垣島で行われる今季の地域決勝を見越し、予算的な面からも長く全社に拘束されることを嫌ったクラブもあったようだ。

 その中で優勝したAC長野パルセイロは初戦から5試合とも選手の入れ替えを図りつつ勝利を重ね、バックアップメンバーの強化とともに5日間の連戦を経験しチームの層の厚さを見せ付けた。
 チームにはDFリーダー丸山良明(前ベガルタ仙台)、ダブルボランチを組む貞富信宏(前アルテ高崎)、土橋宏由樹(前松本山雅)、点取り屋の要田勇一(前ジェフユナイテッド市原・千葉)とセンターラインに人が揃い、チームとしての安定と強さで文句無しの優勝だった。


 準優勝に輝いたNECトーキンは準決勝での選手の頑張りが光った。特に準決勝松本山雅戦の後半で見せた各選手の気持ちの入ったプレーは特筆ものだ。
 中盤の千葉真也(前ソニー仙台)、小笠原正樹(前TDK SC)とそれまで潜在能力は評価されていたものの精神的にムラが多いと言われてきた選手を球際で強さを見せる選手に変えた佐藤健一監督、渡辺佳孝監督代行の手腕は大きく評価されるものだった。

 チームには千葉、小笠原、キャプテン大橋良隆(前ベガルタ仙台)といったパスセンスに優れる中盤の選手のほか、ボランチの高嶋啓佑(前仙台大)、左サイドバックの寺内雄貴(前FCプリメーロ)といった大会屈指の汗かき役がおり、大崩することの無い試合運びを見せた。
 また、FWには全国的に無名ながらもゴールへの強い気持ちを見せる佐藤幸大(前富士大)が控えており、ボールを奪ってから正確にパスを繋いで前線の佐藤がゴールを奪うパターンが出来ていた。強い気持ちを切らさずにチーム一丸で臨めば、地域決勝でも台風の目となるだろう。


 一方、準決勝でNECトーキンに敗れた松本山雅はこの準決勝戦が全てであったろう。

 開始4分に絶対的エース柿本倫明(前湘南ベルマーレ)が先制点を決めたものの、その後は相手にボールを支配された。後半12分、それまで相手DFを2人、3人と引きつけていた柿本をベンチに下げるとNECトーキンに余裕を与え、後半24分に失点。さらに後半ロスタイムにディフェンスリーダーの矢畑智裕(前図南SC)を2枚目の警告で失うと、2試合続けての延長戦で10人での戦いを強いられて延長後半ロスタイムに失点。
 天皇杯3回戦でJ2の湘南ベルマーレを破り意気上がる中、毎試合多くのサポーターがチームの後押しをした松本山雅。しかし、得点を柿本一人に依存せざるをえない状況での5連戦で息切れ。

 地域決勝への出場権は逃したものの、11月2日に天皇杯4回戦を控えており、まだ2008年シーズンが終わった訳ではない。チームを見捨てることなく声援を送り続ける地域リーグNo.1のサポーターとともに、松本のチームとして今後へ挑む。


 松本山雅を3位決定戦で破り、地域決勝への切符を手にしたのは宮崎県のホンダロック。
 勤務後の練習、全国的に知名度のある選手が少ないなどのハンディを抱えるものの、徹底したチームコンセプトの確立で全国社会人選手権3位となった。
 AC長野パルセイロの要田、NECトーキンの佐藤、松本山雅の柿本、他の上位チームには絶対的なエースが存在するが、ホンダロックにエースと呼べる存在はいない。しかし、選手一人一人が頭を使い動き出しと第3の動きで相手を翻弄した。DFラインの駆け引き、FWの動き出し、中盤のフォローetc…個々の能力の差を組織でカバーしての3位は、福田浩一監督をはじめクラブ全体の意思統一の高さを窺わせる。

 準決勝までの4試合でスターティングメンバーに変更が無いなど、選手層や戦術の幅という面では課題を残すものの、一つのことを突き詰めた末の強さは他の企業チームへ一つの指針を示している。




 地域決勝への敗者復活戦に注目が集まりがちな全社だが、この大会は全国社会人選手権大会。各地域リーグや都道府県リーグで戦う各チームの選手や選手の家族にとっては晴れの舞台となる。
 選手権へ出場する孫の応援に新潟まで駆けつけたおばあちゃん。初の全国デビューを果し、高揚感を覚える地域リーグ所属チームのサポーター。サッカー部の全国大会出場にバスツアーを繰り出す企業チーム。Jを目指すチームとの勝負に燃える選手達。全社には全国大会ならではのドラマもある。
 3回戦以降は平日に行われるため、2回戦の勝利後に月曜日の休暇申請に頭を抱える選手が現れるのも全社恒例の風景だ。

 また、毎年この大会を楽しみとし、全国から足を運ぶマイナーカテゴリーのサッカーを愛するファンがお互いに交流を深めるのも全社の風景の一つ。


 全社にはまた、翌年に開催される国体サッカー競技のリハーサル大会としての側面もある。
 多くの会場では地元スタッフが全国から訪れたファンを笑顔で迎え、最高のピッチコンディションで選手に提供した。シャトルバス時刻の告知などの問題点はあったものの、来年の国体本番へ向けてリハーサルはまずは成功裡に大会を終えた。

 全国から多数の人々を迎え、悲喜こもごもを織り成す全社は来季、千葉県で開催される。


 最終日のビックスワンの上空には白鳥が姿を現し、水田は刈り取りを終えて冬の準備を始めていた。全社が終わるといよいよ地域リーグも佳境。

 リーグカップの無いリーグではこの大会をもってシーズン終了となるチームもある。また、地域決勝へ出場するチームにとっては運命の1ヶ月を迎えることとなる。
 地域決勝へ向けて、地域リーグの各チーム、ファンは落ち着かない季節が始まる。

(文・北沢耕一)

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決勝戦では来年行われる「トキめき新潟国体」のマスコット「とっぴー」「きっぴー」も集合写真に参加。
全社の位置づけは地域決勝への敗者復活戦だけではない。(写真・北沢耕一)
posted by 3rdFlightFootball at 12:20 | TrackBack(0) | 地域リーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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