2008年10月12日

020【東海1部】「サッカー王国、ここにあり」(第43回東海社会人サッカーリーグ1部第14節2日目/10月4日/矢崎バレンテ vs. 静岡FC/藤枝市民グラウンド)

 JFL以下の社会人サッカーを追う人間には「一度は静岡のサッカーにはまる」という言葉がある。静岡と言えばサッカー王国として名高く、高校選手権では「全国制覇するよりも県代表になる方が難しい」とも言われる。
 しかし、こと1種のサッカーに限ればその言葉の意味を知ることは難しい。だが、4部に該当する東海1部に関しては、「サッカー王国」という名が納得出来るだけのものがある。

 東海社会人リーグ1部は「サッカー王国」静岡県の他、愛知県・岐阜県・三重県のチームが8チーム在籍している。現在東海1部で強豪チームと呼ばれるのは静岡FC、矢崎バレンテ、藤枝市役所の3チーム。第39回大会からの5シーズンでこの3チームが4位以内に入らなかったのは1回だけだ。昨季のベストイレブンは全員がこの3チームから選出されている。
 今季も第14節1日目終了時点で藤枝市役所の3位が決定しており、静岡FCと矢崎バレンテが1位と2位でこの日の直接対決を向かえていた。
 試合が始まる前の時点で静岡FCの勝点は30、得失点差は+28。一方の矢崎バレンテの勝点は28、得失点差は25。この試合の勝敗如何では順位が入れ替わる。
 しかし、東海リーグは変則日程を組んでいるため、静岡FCの方が残り試合が1試合多い。仮に矢崎バレンテが勝っても、10月12日に行われるMINDHOUS四日市との試合に静岡FCが勝てば逆転されてしまう。MINDHOUS四日市は7位と降格圏にいるため、矢崎バレンテは勝っても安心できない。

 さて、簡単に両チームの紹介をすると、静岡FCは静岡市(当時)からJリーグを目指し2001年に発足したクラブチーム。2002年に東海リーグへ昇格すると同時に優勝。以後毎年地域リーグ決勝大会へ出場するも、今だにJFLへの昇格を果せずにいる。
 一方の矢崎バレンテは静岡県島田市にある矢崎総業の企業チーム。1995年の東海リーグ昇格以降常時上位に顔を出している。昨年は全国社会人サッカー選手権で準優勝を果たし、注目を集めている。


 試合は秋晴れの中、藤枝市民グラウンドで行われた。FWの清野智秋(元札幌ほか)、FW下司隆士(前鳥栖)などの元Jリーガーを擁する静岡FCが序盤から試合を支配。前線でテクニックを見せる清野を中心に、前半4分、12分と立て続けにチャンスを作ると、前半17分にフリーキックを清野が頭で合わせて先制。
 対する矢崎バレンテは球際では互角の勝負をするものの、チーム全体としての動きは低調。1点リードされ、このままでは2位が決定してしまう矢崎バレンテ。しかし、そのプレーからは必死さが伝わってこなかった。
 これには地域リーグ決勝大会の出場枠にも関係がある。


 共に、JFLへの出場決定戦ではある地域リーグ決勝大会への進出を目指している両チーム。今までは9つある地域リーグの首位9チーム。そこに前回大会で決勝リーグへの進出地チームが出た地域の2位チーム計4チーム。
 その他に全国社会人サッカー選手権の優勝に順ずる成績を収めた1チームの合計14チームに出場権が与えられた。14チームが4つのグループに分かれて予選リーグを戦っていたため、3チームのグループと4チームのグループがあった。
 今季よりその出場権の選出方法が変わり、16チームに地域リーグ決勝大会への出場権が与えられるようになった。
 9つの地域リーグの首位チームと前回大会の決勝リーグ選出チームの合計13チーム(今回は12チーム)に変わりは無いが、その他の3チームだが、「大学連盟推薦」「JFA優遇措置」と「全国社会人サッカー選手権」の3位以内でもっとも上位の地域リーグ決勝大会出場権を獲得していない1チームに優先的に出場権が与えあれる。
 以上16チームに該当するチームが無い場合は、各地域に優先順位を与えて順位が高い地域の上位(2位もしくは3位)チームに出場権が与えられる。

 今季は「大学連盟推薦」と「JFA優遇措置」での出場権獲得チームが発表されていないため、優先順位が高い東海リーグの2位チームにも地域リーグ決勝大会への出場権が与えられる。
 そのため、矢崎バレンテはこの試合に負けて2位となっても地域リーグ決勝大会には出場出来る。


 前半は静岡FCペースのまま0-1で終了。
 後半、矢崎バレンテは前半とは打って変わって積極的なプレーを開始する。全体に前からプレッシャーをかけてボールを追い込み、攻めては思い切りのよいシュートで静岡FCゴールへ迫った。矢崎バレンテの攻勢に刺激されるように静岡FCもスピーディーな攻めを見せ、試合は攻守の切り替えの早い展開となる。
 後半21分、矢崎バレンテのFW井口大輔が静岡FCの裏を突いてゴール。矢崎バレンテは負傷した選手が治療のためピッチ外へ出ていたため、10名でのプレー中の得点だった。
 一人少ない中での得点にいき上がる矢崎バレンテ、一方の静岡FCは集中を欠いての失点で守備の不安を覗かせた。
 その後、お互いに攻め合うものの両GKのファインセーブもあり1-1で終了。この結果、静岡FCの優勝が決定した。


 順位がほぼ決定し、共に勝負へのモチベーションに欠ける中で行われたこの試合。プレスも比較的緩くお互いに怪我を恐れるようなプレーも見えたが、球際の一対一には見ごたえがあった。
 他の地域を見るとチームとしての組織でサッカーをするチームも多いが、東海リーグの場合は個の力でサッカーをするチームが多い。その中でも静岡FC、矢崎バレンテ、藤枝市役所の静岡勢は格別だ。

 選手は一対一では絶対に負けないという気持ちが見え、球際での勝負がピッチ上のあちこちで展開される。
 テクニックの高い選手同士が1個のボールをかけて勝負をする様は、他の地域はもとよりJでも中々お目にかかれない姿。個の力を封じるために組織を磨いてきた日本サッカーの中で、静岡の社会人サッカーは個の力で勝負する選手を生かすという特別な個性がある。
 それはチームだけでなく、観客や審判にも言える。

 観客も一対一での勝負に勝つことで歓声がおこる。審判も接触プレーは勝負の中の一部と認識しているかのように、プレーを流すことが多い。選手が倒れても多少のことならば笛は吹かれない。自分から倒れにいくような選手は見向きもなれないのが、東海リーグの面白さだ。
 他の地域であれば痛がってみせれば吹かれる場面でも、東海リーグならば勝負に負けたと見なされる。テクニックを披露するサッカーは、他の地域のサッカーを観た目にはとても新鮮で魅力的に映る。


 球際の勝負だけでなく、何げないプレーの中でもピンチの芽をさり気なく摘み取るプレーも随所に見られ、そのたびに観客が唸る。選手、観客、審判の全員がサッカーを知っている静岡は看板どおりの「サッカー王国」だ。

(文・北沢耕一)

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リーグ最終戦を向えた矢崎バレンテの健闘に拍手を送るファン。会社の先輩や家族がチームを支える。(写真・北沢耕一)
posted by 3rdFlightFootball at 00:26 | TrackBack(0) | 地域リーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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