2008年09月23日

011【なでしこリーグ】「オープンマインド」(第20回日本女子サッカーリーグディビジョン1/9月21日/TEPCOマリーゼ vs. 美作湯郷Belle/Jヴィレッジスタジアム)

 「ベルボーイズ」というサポーター集団がいる。ベルボーイといってもホテルマンでは無い。英語で書くと“Belle Boy's”となる。なでしこリーグディビジョン1に所属する美作湯郷Belleのサポーター集団だ。
 彼らはチームをサポートすべく、どこまでも行く。新潟だろうが東京だろうが、お構い無しだ。9月21日に福島県Jヴィレッジで行われたTEPCOマリーゼとの一戦にも岡山から車で10時間掛けて乗り込んだメンバーもいた。

 ベルボーイスには岡山の本隊とは別に、関東にもメンバーがいる。「東京ベルボーイズ」と呼ばれる彼らはユニークな存在だ。岡山出身者だけでなく、関東生まれ関東育ちのメンバーも多い。彼らは、もちろんサッカー好きでそれぞれ好きな男子チームが異なる。FC東京、横浜FC、ザスパ草津、徳島ヴォルティス etc・・・Jリーグで対戦すれば敵同士となる彼らだが、なでしこリーグの試合では気持ちを一つに湯郷ベルをサポートする。

 湯郷ベルを応援するのは声出しサポーターだけでは無い。選手の家族や、以前埼玉県で行われた国体の際に選手を泊めたお宅のご夫妻も、熱烈な湯郷ベルのファンだ。岡山と東京のベルボーイズを始めとして、総勢20名を超える湯郷ベルのファンが、Jヴィレッジへと駆けつけた。


 前週、天皇杯1回戦を行ったJヴィレッジスタジアムで行われたなでしこリーグディビジョン1の試合。だが、会場周辺の雰囲気は天皇杯の時とは一変していた。
 駐車場の誘導に当たる警備員がいることはもとより、広野駅からは無料シャトルバスが頻発し、入場ゲートにはテントが並べられて多数のスタッフが手馴れた様子で準備を行い、試合開始2時間前にも関わらず多くのマリーゼサポーターが列を作っていた。このマリーゼサポーターの列には正直度肝を抜かれた。
 開門前の行列は、JFLでもあまりお見かけしない光景だ。おまけに、この試合は無料試合。マリーゼが地域でいかに大切にされているかを表すような光景だった。

 天皇杯との違いは会場周辺と共に、会場内にも及んでいた。
 スタジアム内には近隣の浪江町の名物焼きそばの屋台が出店されたのを始め、豚汁やマリーゼ風ハロハロを売る屋台が並び、グッズ売店ではビールも販売されていた。1つの自動販売機しか飲食物を購入出来る場所しかなかった先週とは、まったく違う華やかな雰囲気があった。


 開場後も多くの地元ファンが駆けつけた中で行われた試合は今季ディビジョン2から昇格してきた6位マリーゼと、序々に力をつけてディビジョン1に定着している湯郷ベルとの対戦となった。
 試合は前半、なでしこジャパンにも選出されているFWの丸山桂里奈を中心に攻撃を行うマリーゼが主導権を握る。なでしこジャパンの守護神、GK福元美穂を中心にゴールを守る湯郷ベルだが、丸山一人を恐れて他の選手へのマークが曖昧になり度々ピンチを招く。
 前半はマリーゼがペースを握ったまま、0-0で折り返す。

 後半も丸山を中心とした攻撃でマリーゼがペースを握る。しかし、決定機でシュートがバーに当たる不運もあり得点が出来ないマリーゼ。一方の湯郷ベルは後半15分にMF田畑沙由里に替えてFWの中川千尋を投入。150cmと小柄ながら鋭い飛び出しと相手DFの視界から消える動きが光る中川にマリーゼ守備陣は手こずり始める。
 中川へマークが集中した隙を突き、後半20分になでしこジャパンでも活躍するMF宮間あや がフリーで抜け出し、GKの動きを良く見て得点を奪う。北京五輪でも活躍した宮間の落ち着いたプレーで湯郷ベルが先制。
 その後、マリーゼの反撃を受けるも守りきった湯郷ベルが0-1とアウェーで勝利。

 この試合で全21節のうち14節と3分の1を消化したなでしこリーグ ディビジョン1。首位の勝点34の日テレ・ベレーゼを勝点30の浦和レッドダイヤモンズレディースとINAC レオネッサが追う。湯郷ベルは勝点26で4位と中位を形成し、マリーゼは勝点10で6位と残留圏内を確保している。


 なでしこジャパンが北京五輪で4位に入る活躍をして注目を高めているなでしこリーグだが、決して安泰という訳ではない。
 来年からはアメリカで女子リーグが再開されるが、日本の選手達も戦力としてピックアップされているという。競技レベル、資金力に勝るアメリカのリーグが、なでしこリーグ自体のライバルとなる可能性は大きい。
 また、昨今の不景気が今後リーグ全体に与える影響も無視出来ない。現に、昨季までリーグスポンサーになっていた企業の撤退があり、業績悪化による余波が噂される企業チームもある。
 バブル崩壊後に廃部やチームのリーグ撤退を数多く経験してきているなでしこリーグ。新たな正念場が、目前に迫っている。


 アウェーでの勝利に、岡山や関東から駆けつけたベルボーイズの面々にも笑顔が溢れる。その後、メンバーは次回の再会を約束し、翌日の仕事へ向けてそれぞれが家路を急いだ。
 岡山県在住者や岡山県出身者がサポーターとして地元の湯郷ベルを応援する気持ちは理解出来る。しかし、何故関東に生まれ、関東に育った人間が遠く岡山のチームを応援するのか。その疑問を解き明かす鍵は「オープンマインド」という言葉にある。

 ベルボーイズには、何かのキッカケでたまたま湯郷ベルの試合を観に来た人を受け入れるだけの度量がある。わだかまりも無く、自然に仲間に入れる。Jリーグで応援しているチームは問われない。ただ、目の前の湯郷ベルを応援するという気持ちでメンバーは繋がっている。
 その気持ちの良い割り切りが、別に応援するJチーム持つ多くの仲間を引き入れている。

 応援に流儀は必要だろう。だが、自分達の流儀にこだわって間口を狭くしているサポーター集団も多いように見受けられる。ベルボーイズのように、まずはチームを応援する気持ちを大切にして新しい仲間を受け入れる度量も、時には大事なのではないだろうか。
 もちろん、そのためには相手を尊重する気持ちがお互いに必要だが。

(文・北沢耕一)

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スタンドから声援を送る“Belle Boy's”(写真・北沢耕一)
posted by 3rdFlightFootball at 11:54 | TrackBack(0) | なでしこリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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