2010年06月25日

036【ワールドカップ】「本田の1トップはキャプテン翼文化の最高到達点」(2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会Group E/6月24日/デンマーク代表 vs. 日本代表/ロイヤル・バフォケン・スタジアム)

 2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会は、日本代表がGroup E最終戦でデンマーク代表に勝利、勝ち点6としてRound of 16への進出を決定した。“アウエー”のワールドカップで1勝したのが初めてなら、決勝トーナメントに進んだのも初めて。これをブレイクスルーと言わずして、なんと言おう?

 今大会における欧州勢の不振をみるにつけ、「なんだ、サッカー強国と言ったって、“ホーム”開催のワールドカップに強いだけじゃないか」と言いたくもなるのだが、その分析は他に譲るとして、ここでは試合直後のtweet(http://twilog.org/TokyoWasshoi)をもとに、日本のストロングポイントがなんなのかを考えたいと思う。


1)国民性と個の力

http://twitter.com/TokyoWasshoi/status/16960398829
雰囲気的には、'99ワールドユース〜'00シドニー五輪のチームに近くなってきたと思う。どこまで行くか楽しみだ #2010wc
posted at 05:47:30

 今回のワールドカップと同じくアフリカ大陸で戦った'99年のU-20日本代表が肉体的に頑健だったかと言われると、そういうわけではない。A代表と年代別代表を同列に語ることはそもそも無理があるし、メンバーの資質も違えば戦術も違う。しかしあのチームと今回の2010日本代表には共通する点がある。
 それはチーム全体として相手国の民族的資質を同じ面で凌駕しているわけではないのに、日本人の特徴を生かして勝負に勝っているところだ。

 '99ナイジェリアのとき、ブラックアフリカンのカメルーンには1点差で負けた。彼らの身体能力や独特のリズムに抗い切れたわけではない。決勝で敗れたスペインや、素人GKがゴールマウスを守るはめに陥ったポルトガルの巧さにも苦戦した。

 しかし照明の消えたイングランド戦では石川竜也の直接フリーキックによる先制点が大きくものを言って2-0で勝ち、決勝トーナメント進出を決めた。デンマーク戦と同様、セットプレーの巧みさが欧州撃破とRound of 16進出をもたらしたのだ。

 北欧の大きさ、パワー。南欧や南米の個人技。アフリカのバネ。それらを上回る力が日本にあったわけではない。しかし「ある程度の巧さ」と「戦術を遂行する真面目さ」、セットプレー、それにいくばくかの個人的資質、まとまりといった得意な面を押し出して決勝戦まで進み、7試合を戦った。

 とはいえ、ごくごく限定的には、強い個の力が効いているのも事実。絶対数では欧州や南米に劣るのだろうが、各年代にひとりは、個々の「パラメータ」で判断して「スペシャル」な選手が出現するのが、日本のサッカー界だ。

 '99年は、個人技での突破は、もっぱら本山雅志に委ねられていた。今回の日本代表では松井大輔がそのポジションに該当する。

 国力競争なら日本は欧州や南米のサッカー強国に、質量で劣るのかもしれない。しかし代表チームの試合に先発出場できるのは等しく11人だけ。少なくとも代表同士の試合を壊さない程度の選手は揃えることができる。

 まだ日本の総体的なレベルが低かった1968年のメキシコオリンピック日本代表においても、左ウイングのスピードスター、杉山隆一の突破力が得点の源泉になっていた。

 田中マルクス闘莉王の高さ。長友佑都のスピードとスタミナ、強さ。松井大輔の個人技。遠藤保仁と本田圭佑のフリーキック、キープ力。そこそこの巧さや勤勉性といった国民としての特徴に加える個の力が、'68年は杉山隆一と釜本邦茂、'99年は小野伸二と本山雅志だけだったとすれば、'10年は日本基準を超えた個がより多くなっていることになる。

 フィジカルエリートの大半をプロ野球にさらわれている状況でもこれだけの選手を揃えられるのはありがたい。
 育成に失敗したとは言われつつも、裾野を広げてきた効果が現れはじめているのかもしれない。


2)ワーワーサッカー

http://twitter.com/TokyoWasshoi/status/16965464205
現状の日本にはワーワーが最適という見方を裏付けるような内容だったな > デンマーク戦。セットプレーと1トップに入ったMFのアシストによる得点 #2010wc
posted at 07:17:30

 問題は選手を動かすための戦術だ。今年に入ってから代表が迷走したのは、コンディション不良もあることながら、戦術のコンセプトが定まらなかったことが原因ではないかと思う。本大会登録メンバーを決め、韓国戦を戦ったあとの準備期間で戦い方が大きく変わったが、この変化が冴えていた。

 アーセン・ベンゲル監督が名古屋グランパスエイト(現在は名古屋グランパス)の監督に就任、めきめきと強くなると「タスクをシンプルにしたのがよかった」という評価の声が上がった。
 自分の頭で考え、決断する力が弱いか否かは別にして、与えられた命令を忠実にこなすことにかけては、日本人は秀でていると言っていい。しばしば教科書的と揶揄される所以でもあるが、それが特徴だ。
 ならばやることがシンプルに整理されていれば、よりその特徴は強固になる。

 今回の日本代表の場合、立ち返るべき原点が明確になったのが大きい。言わずもがなだが、自陣にリトリートしてブロックを築く守備が、このチームの基本になっている。相手ボールになったらその守り方を実行すればよいから、迷いがない。

 自陣に引くからと言って、守備専門というわけではない。あくまでもボールを奪う位置の基準が後ろ目で、守備の仕方がブロックを築くことが基本になっているというだけだ。可能なら全体を押し上げるし、高めの位置でボールを奪うこともある。
 もちろん攻めやパスワークを放棄したわけではないから、隙さえあれば「日本的」なチャンスメークをする。
 もしタコツボのように守っているだけという分析があったとすれば、それは甚だしいまちがいだろう。

 本田の1トップはキャプテン翼文化の最高到達点だ。点を取れる強いFWが不足したおかげで、DFが守、MFがパスを出してFWを決めるという「分業サッカー」を日本代表が実行することはきわめて難しい。
 しかしそれならそれで、中盤をもてはやしたおかげで大量に発生した技ありMFの力を素直に生かせばいい。キープ力の優れたMFを1トップに置いてポストプレーを期待するのは、合理的な判断だ。

 優秀なキッカーは優秀なストライカーよりも遥かに多い。FWが点を取れないなら、集団でワーワー言いながらボールを半スクラム状態で前線へ運び、ファウルゲッターがフリーキックを獲得して、ヤットや本田△に蹴らせればよい。
 岡田ジャパンはリザーブドッグス的オールコートプレスの試行錯誤を経て、ワーワーサッカーの境地に到達したのである。

 思えばトルシエジャパンの2トップは点取り屋ではなかった。鈴木隆行はファウルゲッターだったし、柳沢敦はアシスト王だった。
 FWのポジションにストライカーの機能を求めない。これは言い換えれば、すべてのポジションの選手にストライカーとしての責任を分散するということでもある。

 得点の責任はFWだけが負うものではないし、失点の責任はDFだけが負うものではない。ボールの取り方、失い方が悪ければ、それが最終的に得点や失点の原因になる。
 トータルフットボール化した現代サッカーでは、そう考えるべきなのではないか。

 たまさか決定機が巡ってきた場面でそこに居合わせた選手がフィニッシャーになるのであって、あらかじめフィニッシャーが必ずシュートを打つと決まっているわけではない。
 オランダ戦開始直後の長友のように、もし打つべき場面に遭遇すれば、どのポジションの選手がシュートを打ってもよい。

 グループステージ4得点中、FWを本来のポジションとする選手が決めたゴールは岡崎の1点だけ。それに何か問題があるだろうか? キャプテン翼文化の上に成り立つ現在の選手層からすれば、MFが4点中3点を取るという結果は、むしろ成功と呼べるのではないだろうか。


(文・後藤勝)
posted by 3rdFlightFootball at 17:12 | TrackBack(0) | 国際Aマッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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