2010年02月22日

035【東京カップ】「社会人サッカーの挟持」(東京カップ1次戦Bブロック準決勝/2月14日/CERVEZA FC東京 vs. 東京ベイFC/あきる野市民運動広場)

 今年も東京カップの季節がやってきた。「天皇杯予選のさらに予選」であり、「全社関東予選のさらに予選」である東京カップ、その1次戦は、冬のもっとも寒い時期におこなわれる。
 秋春制反対、などと叫んでも仕方がない。3月開催の2次戦から逆算すれば、どうしたってこの1月末から2月末までの1ヵ月に1次戦を消化するしかないのだから。

 サッカーを愛好する大多数の成人男性は、本業をまっとうしながら、男子第1種登録をし、週末に全国社会人サッカー連盟主催の大会に出場する。彼らがサッカーのために自由にできる活動日数は、基本的には年間50日+αしかない。いくらJリーグをめざすチームや選手が増えようが、社会人の都合を考えずして、サッカーカレンダーを作ることなどできない。地域決勝にしても、あれはそもそもJリーグへの関門などではなく、単に全国に散らばった社会人が集う大会だ。少しでも勤労時間に差し支えないように配慮した結果が、現行の金土日×2ラウンド制なのだ。開催間隔を空け、キックオフ時刻を昼以降にしたなら、試合の消化によけいな時間がかかってしまう。社会人にそんな負荷をかけていいはずがない。

 ことしの東京カップは、最強レベルの5チームが2次戦シード。1次戦では準々決勝シード、2回戦シード、1回戦から出場の3つのレベルに分かれる。天皇杯の本選同様に不平等な組み分けをしているわけだ。

 もし全チームを横一線にならし、フラットなトーナメント表に整形したとしたらどうなるだろう? 試合数は均等になり、暖かい時期に日程をずらせるかもしれない。しかし実力差のあるチーム同士が初戦でぶつかり、10-0のスコアが頻発するようなら、コンペティションとして大きな問題がある。現に今大会では1次戦の準々決勝まで進んでいながら、東京ベイFCが目黒FCを10-0の大差で下している。実力が下位のチームには、それ相応に活躍できる機会を与えるべきだ。

 いびつなトーナメント表が社会人チームに与えるのは、リーグ戦開幕前に自分たちの実力を測る機会だけではない。年間50週しかない活動機会のうちの1週間から1ヵ月を、充実したものにしないでどうするのか。競技としての満足度は、できるだけ欠かさないほうがいい。
 1次戦の1回戦や2回戦を接戦で勝ち抜け、準々決勝や準決勝で強豪に敗れたなら、身の丈にあった満足とあきらめが得られるだろう。

 みんながみんなプロになるわけではない。ある一定の条件のなかでどれだけ磨きをかけられるか、そこに注力するアマチュアプレイヤーが、それなりに手応えのあるサッカー人生を送れるようでないと、この国のサッカー文化が豊かになったとはいえないと思う。

 一年ぶりの更新のせいか、すっかり前置きが長くなった。1次戦Bブロック準々決勝シードの東京ベイFCは、前述の通り、目黒FCとの「目黒川ダービー」を10-0の大差で制して準決勝へと勝ち上がってきた。前年に初戦の準々決勝で敗れた鶴巻SCは別ブロック、しかも1回戦負けとあって、ベイの視界にはまったく入ってこない。そのせいか、余裕の勝ち上がりだった。

 すっかり1部の上位に定着した東京ベイFC(昨季は14チーム中4位)に対し、CERVEZA FC東京は2部の2ブロック優勝を果たして今季1部に戻ってきた(2部は3ブロックに分かれ、各ブロックの優勝チームが1部に自動昇格)ばかり。準々決勝シードとはいえ、昨季2部3ブロック3位のFC.OZZAを2-1の接戦で下しての準決勝進出である。一見、ベイと同格とはいえないように見える。

 下部組織を整備、元JリーガーやJFL選手を多数擁し、JFLを狙うと公言するベイと、純粋な社会人クラブチームであるCERVEZAとでは、たしかに土俵がちがうと言っていいだろう。しかし純粋な練習機会の多さだけを比較すれば五十歩百歩だ。CERVEZAにチャンスがないわけではない。
 はたして、試合は好ゲームとなった。

 中学校の校庭とつながったあきる野のクレーコートはまさに校庭にすぎず、前夜の雨でぬかるんでいたが、それに文句を言う選手は、どちらのチームにも、ひとりもいない。第一試合が終わった後、凸凹になった地面のうえで、いかにいいプレーをするか。それだけを考えていた。
 試合間隔の詰まった1次戦は、35分ハーフの70分制でおこなわれる(2次戦は90分制)。この短い時間をどう戦いきるか。互いにシステムは中盤がフラットな4-4-2。都リーグスタンダードなフォーメーション同士、真っ向からぶつかった。
 カテゴリーが下といえど、サッカーをなめた様子は微塵もない。シャツからソックスまでが真っ赤に染まったCERVEZAと、全身青のベイが激しく体をぶつけあう光景は、リバプール対チェルシーを思い起こさせた。

 コートのコンディションによるものか、基本的には蹴り合いとなった。ファーストハーフの35分を優勢に運んだのはCERVEZAだ。ロングボールを蹴り、スペースの裏へ走り、コーナーキック、フリーキック、ロングスローのチャンスを駆使してベイのゴールに迫った。
 いっぽうのベイはなかなかラインを押し上げることができない。前線で起点となっていた16番のFWイゴールが2、10、6番の3人に囲まれてボールを奪われるなど、手詰まり感があり、逆にCERVEZAの堅実な守備が光った。少々荒れ気味ではあったが、それだけ真剣なフィジカルコンタクトが実践されていたのだろう。

 ハーフタイムを挟み、今度はベイがターボスイッチを入れる。最初の15分は4本のシュートを放ったベイがペースを取り戻した。だが、その後は一進一退の攻防がつづく。ほぼ1分おきに双方のチームに決定機とセットプレーがあり、メモ帳がファーストハーフよりも早いペースで埋まっていく。セカンドハーフの25分には、ベイは切り札の7番MFホルヘ(元福岡ブルックス)を投入。ファーストタッチでピンポイントキラーパスを放ち、以後セットプレーを仕切ってチャンスを作り続けるが、それでもゴールは生まれない。
 終盤まで0-0の状態がつづき、誰もがPK戦突入かと思ったセカンドハーフの34分に事件は起きた。

 ベイの前線にロングボールが上がる。25番のFWがCERVEZAのDFに競り勝つと、それを信じて後方から猛然と走り込んできた、途中出場のFW内山がボールを拾う。相手DFふたりに挟まれながら無理やり打ったシュートは、DFの足に当たりつつコースを変え、GKが重心を落とした左とは逆の右へと転がっていく。
「コロコロコロ」という擬音が聴こえてきそうな超スローのゴロなのに、GKは振り返ることができず、DFも間に合わない。ボールは冗談のようにゴールマウスへと転がった。
「決めたらめちゃくちゃオイシイな、と思っていました。決めたあとのことだけ? 考えていました。(FWが)競り勝つと思っていたので、信じて走るだけでした」(内山)

 爆発的な歓喜のあと、2分のロスタイム。CERVEZAは猛然と反撃するが、ミドルシュートの狙いは予期されて防がれる。この圧力をしのぎきったベイが1-0でCERVEZAを下し、決勝進出を決めた。
 敗れはしたが、CERVEZAにとっては1部でやれる手応えをつかんだ一戦だったのではないだろうか。
 ベイは3月14日、2次戦進出をかけ、駒沢陸上競技場で東京消防庁と対戦する。

◆CERVEZA FC東京・田中剛監督の談話

──ゲームプランは。

「ことし1部に復帰してはじめての年。ベイさんはリーグ戦が始まってすぐに当たるし、最近力をつけているチームなので、力試しのつもりで試合に臨みました。
 90分なり70分をどう集中してマネージしていけるかが毎回テーマになります。ウチみたいに運動量の少ないチームは押し込まれることが多いし、そういうときにバランスを崩さないで失点せずにいけるか。当然フィニッシュは、フォワードとかアタッカーには意識するように言っていたんですけど、思い通りにはいかなかったですね」

──ロングボールが多かったのはクレーコートのコンディションを考えてのことですか?

「そうですね。きょうは足下が悪く、回してもしょうがないので、スペースにロングボールという指示をしました。あとはセットとスローインが狙い目だったんですけど、うまくいきませんでしたね」

──守備がいいなと思ったんですけど。

「毎年なぜかディフェンスでいい選手が入ってくる。そういう個人の技術に助けられている部分もあります。サッカーの経験が長い選手たちなので、ディフェンスという“受ける”プレーは上手にできますね。守備をしっかり、失点をできるだけ少なくするというのは、いつもテーマに掲げています」

──練習時間は平日にとれてますか。

「ないです、ないです(苦笑)。ウチは完璧にサラリーマンチームなので、木曜に練習を入れてはいるんですけど、7〜8人、よくて12〜13人が来ればいいほうです。あとはこの日曜日だけ。公式戦がないときは練習試合を入れていますけど。週末は必ずやっているので、年間50週は活動しています」

──今シーズンにかける意気込みを。

「とにかく、チームとしてはベスト4。今年、関東大会には4チームが出られるという話なので、ちょっとおこがましいですけれども、目標としてはそこを。スタッフとしては、1部にかぎらず2部もそうですけれども、レベルがどんどん上がっているので、しっかり1部のグレードで全試合を戦えて、それなりのポジションで終えて降格はしない、そこがいちばん大事かなと思っています。いい選手はいるので、できれば組織的な戦術やフィジカルのレベルを上げてひと皮剥けたいと思っています」

──東京23も力を入れていますし、都リーグ1部、2部は大変なことになっていますね。

「なによりも、都リーグの1部や2部の上のほうは、こういうクラブチーム(CERVEZAのような)は少なくて、ベイさんもそうだけどすごく運営のしっかりしているチームが多い。ぼくらと世界がちがうんですけど(笑)、なんというんだろうな、東京都社会人リーグ、と“社会人”の名がついているリーグだけに、ぼくらも社会人ですから、その中では存在感のあるチームにしていきたいと思っています」

 社会人には社会人なりに、戦うべき場と理由がある。そのことをあらためて認識させられた、激しく厳しい一戦だった。


(文・後藤勝)

posted by 3rdFlightFootball at 19:49 | TrackBack(0) | 天皇杯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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