2008年11月11日

030【関東社会人】「スキルの差を埋めて」(第42回関東社会人サッカー大会2回戦/11月9日/坂戸シティーFC vs. tonan前橋/神奈川県立体育センター球技場(ローン))

 関東社会人2回戦は県立体育センター陸上競技場での試合と同時に球技場(ローン)でも行われた。球技場にはメインに小ぶりな、それでもサッカー観戦には十分な傾斜と座席を有するスタンドを持つ。ゴール裏とバック側にはスタンドは無いものの、ピッチレベルからの観戦が標準とも言えるこのカテゴリーでは十分過ぎる環境だ。
 この球技場での第2試合は今季2部から昇格し、一気に埼玉県1部3位で関東社会人へ初の出場権を獲得した坂戸シティーFCと、6年連続で関東社会人に出場している「常連」tonan前橋との対戦となった。


 全国的に名前の知れた選手のいない坂戸シティーに対し、2年連続で全社への出場も果しているtonan前橋には鏑木豪(元FC東京など)、森田真吾(元横浜FCなど)、氏家英行(元大宮など)などの元Jリーガーを始め、韓国U-17、U-20代表経験を持つ黄圭煥(前大田シティズンFC)、さらにはブラジル籍選手までが在籍する。選手の名前だけで勝敗が決まるなら、試合前からtonan前橋の勝利は決定していただろう。
 しかし、サッカーの面白さは下克上にある。個人技に差がある言われるチームへ対し、どのように挑んでいくのか?それは世界で戦う際の日本の課題でもある。

 坂戸シティーはスキルの高い相手に対し、始めから試合を放棄するようなことはしなかった。むしろ積極的な出足で勢いを呼び込み、序盤を支配。すると前半10分、FKからのこぼれ球をプレーイングマネージャーの熊谷哲平(前飯能ブルーダー)が右足で決め、坂戸シティーが先制。
 その後も坂戸シティーが切り替えの早さと連動性で試合をコントロールするものの、個人のスキルに勝るtonan前橋が徐々に反撃を開始。前半19分、FKから上田敏之(前専修大)が押し込んで同点とし、更に攻勢を強めるtonan前橋に対して序盤の勢いを失った坂戸シティーは前半25分以降、守勢に立たされる場面が多くなる。

 後半も試合はtonan前橋がボールを支配。それでもシンプルな攻撃でゴールを目指す坂戸シティーは後半20分に相手DFラインの裏へ抜け出した熊谷がフリーでシュートを放つも、tonan前橋のGK中村楽(元V神戸など)に防がれてゴールならず。一方、ボールを支配するもゴールが遠いtonan前橋は時計が進むにしたがって苛立ちを見せ始める。その状況を打開したのは元U-20代表の氏家。後半32分にペナルティーエリア外より放ったシュートはスリッピーなピッチを滑りゴールへ。相手DFにあたってコースが変わったラッキーもあったが、勝負に対する気持ちで勝利を近づけた。
 残り15分を切ったところでリードを奪ったtonan前橋はキープをしながら時間を稼ぎ、試合終了。1-2でtonan前橋が準決勝へ駒を進めた。


 スコアーだけみれば順当にtonan前橋が勝った試合だったが、内容的には個人のスキルで押し切った形。勝って当然と目されるtonan前橋に対し、初出場坂戸シティーの健闘が光った。
 坂戸シティーはワンタッチ目のボールコントロールで視野を確保し、動き出した味方へ少ないタッチ数でパスを送るという基本に忠実なサッカーを展開。選手個々人の差を正確なボールコントロールと連動性で埋めるサッカーは、日本サッカーが目指した一つの理想を体現したものだった。
 日本が育成年代から取り組み、長い時間をかけて育んだ組織的サッカーは今や6部チームのスタンダードとなるまでに広く浸透している。

 この試合では両チームともサポーターがチームへ声援を送っていた。Jチームが広がりを見せている今、サポーターもより身近なチームへと目を向け始めている。社会人のチームは規模が小さい分、選手・スタッフなどのチームとサポーターとの間にファミリー的な空気がある。サポーターはチームと共に歩みながら上を目指すことになる。
 既成のJチームを応援するだけではなく、もっと身近なマイ・クラブを持つ。日本サッカーの広がりが、このスタンドからも見えてくる。


 6部カテゴリー屈指のメンバーを揃えるtonan前橋はあと1勝で6年越しの夢、関東の舞台へ戻ることが出来る。その悲願の前に立ちはだかるのは東京海上日動火災(株)サッカー部。坂戸シティーよりもさらに組織的でクレバーなサッカーを展開する好チームだ。
 個人技のtonan前橋か?組織力の東京海上日動か?好対照の両チームは11月15日13時より、相模原麻溝運動公園球技場にて激突する。

(文・北沢耕一)
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2008年11月10日

029【関東社会人】「東京王者“BUILCARE”ベスト4進出!」(第42回関東社会人サッカー大会2回戦/11月9日/横浜猛蹴 vs. (株)日立ビルシステムサッカー部/神奈川県立体育センター陸上競技場)

 小田急江ノ島線の善行駅を降りてすぐ「第42回関東社会人サッカー大会会場」と記された看板の脇をくぐると、そこはじつに立派なスタジアムで、思わず感嘆の声を上げてしまった。
 Jリーグを見慣れた目からすれば“みすぼらしい”と言ってもよいのかもしれない。しかしふだん都リーグで使っている普通のグラウンドと比べたら、その品格のちがいは一目瞭然である。かつて神奈川サッカー界のメインスタジアムだった県立体育センター陸上競技場は、神奈川社会人サッカーのメッカとして、いまも生命を吹き込まれている。
 試合前、横浜猛蹴(たける)の関係者がスタンドからピッチに向かい、ボールを拾うように指示すると、下に居た選手からは「拾わなくていいんですよ」という声が返ってきた。なんとこの会場には8人のボールパースンが用意され、マルチボールシステムでゲームが行われるのだ! 気まぐれなギャラリーからの返球を待つのが当たり前の都道府県リーグを思えば、なんと本格的なのだろうとの感慨を禁じえない。日々の試合結果更新とあわせ、ホストである神奈川県サッカー協会のやる気がうかがいしれる。

 2回戦第1試合は隣の球技場に数十秒遅れて始まった。先にペースをつかんだのは、若さをみなぎらせ、ガツガツと勝負に来る神奈川県リーグ1部1位の横浜猛蹴。蹴って走るスタイルかと思いきや、個人技やワンツーで狭いスペースを突こうとする意欲もあり、なかなかに面白みがあるチームだ。
 いっぽう、その欧文企業ロゴから“BUILCARE”の愛称で親しまれる、東京都リーグ1部1位の日立ビルシステムも負けてはいない。15分過ぎから決定機を作り始めると、MF山口のロングスローを中心に主導権を奪い返し、前半も真ん中を折り返してからは、ほぼ日立ビルシステムのゲームとなった。
 キレイに4-4-2の布陣を保ち続けた両チームは、相手守備を崩しきることなく、0-0で前半を終えた。

 ハーフタイムが明け、後半開始直前。円陣を組む声は上下青のユニフォームに身を包んだ横浜猛蹴のほうが大きかった。女子マネージャーの存在もあり、まるで部活の雰囲気。若さとはいいものだと思っていると、ひとり遅れた選手がベンチのサブメンバー数人と肩を組み、ピッチへ出て行く。えてして勝負事ではこういうリズムの選手がヒーローに躍り出たりするものだが──。
 いっぽう、柏レイソルと同じ配色のユニフォームに身を包んだ日立ビルシステムは、ゲーム運び同様の落ち着きぶり。この差が試合にどう現れるか。

 後半7分に日立ビルシステムの14番吹原がシュートを左に外すと、11分には横浜猛蹴で名目上監督・コーチ・主将を兼任する28番鳥毛が後方からのパスをヘディング、左に外す。そうしてほぼ互角の展開で進んだ17分、個人技で左サイドから中央へと割って入った20番斉藤のパスを受けた鳥毛がシュート! その跳ね返りを、遅れて入場した件の選手が押し込む。ついに均衡が破れたかと思われたが、判定はオフサイド。彼はヒーローになりそこねた。
 こうなると流れは日立ビルシステムのもの。途中出場のFW鶴岡が右サイドを突破して吹原にパス。すぐさま蹴ったシュートはキーパーに弾かれるが、そのリバウンドを再び蹴り込み、ついに先制。勝利がグッと近づいた。

 しかしそうは問屋が卸さないのが関東社会人。上のカテゴリーにおける地域決勝もそうだが、この種の短期決戦は内容だとか実力を超えた次元の勝負となる。フットサルのような足裏のテクニックを駆使し、ゴリゴリと突き進む斉藤、そして途中出場の16番川崎健太郎(※カターレ富山の選手と同姓同名だが別人である)、ふたりの個人技を軸に横浜猛蹴が猛反撃。40分、斉藤の蹴った右コーナーキックがファーに飛ぶと、その折り返しを19番坂本がシュート。これは弾かれるが、川崎が押し込んでゴールを決めた。試合終了間際、執念の同点劇。
 そう、これは関東リーグへの昇格を狙うと同時に、地域の覇権を賭けた「関東チャンピオンズカップ」と言ってもいい大会。勝利の女神が簡単に微笑んでくれるはずがない。日立ビルシステムは終盤に退場者を出し、悪いリズムのまま後半を戦い終えた。今年は規定により延長戦がなく、すぐにPK戦。結果的にこれが日立ビルシステムに味方した。
 4本目までに日立ビルシステムはふたり、横浜猛蹴は3人が外し、日立ビルシステムが1点リード。最後はキッカーとして攻撃を形作ってきた山口が、左足でゴール右隅へ速いシュートを蹴り込んで勝負あり。苦しみぬいた日立ビルシステムが準決勝進出を決めた。

 試合後、チームを代表して日立ビルシステムの飯島幸嗣監督に総評をうかがった。
──きょうの評価をお願いします。
「最終的には一発勝負を気持ちで勝ったという部分があるので、この流れを変えずに(次の準決勝も)行きたいと思っています」
──短期決戦ではなかなか実力どおりの結果になりづらく、難しいですね。
「ぼくたちがめざすところは、その先です。勝ちにこだわりながらもゲームをコントロールしていく、というところ。きびしいゲームながらも勝ちにつなげることができたのは、そのゲームコントロールのおかげなのかな、と」
──いつもの「人とボールが動く」というサッカーは出し切れなかった部分もありますか。
「すべてがそうだったとは思っていないです。選手の意識としては、局面では表現できた。ただその回数を増やしていかないと、ぼくたちがめざしているところには辿り着かないかなと思います。ちょっと厳しい目で見ていますが」
──ゲームの支配権を握ったあと、追いつかれてしまったのは何が足りなかったのか。
「あそこはやはり、間延びしてしまった。相手も、最後の最後でイキのいい選手を入れてきてイケイケのなかで、プレーをさせるスペースを与えてしまった。受身になった悪いタイミングでコーナーキックを与えてしまいました。精神的なところとゲームの流れで、いちばん……なんというのか、あってはいけないコーナーキックでした。時間帯も含めて。ゲームを切り、リセットして自分たちのディフェンスを見直すことができなかったのが失点の原因だと思います。間延びすることなく、積極的なディフェンスをやればよかった」

 昨年につづきベスト4中3チームを東京勢が占めるかと思われたが、日立ビルシステムの選手、スタッフが見守るなか、FC新宿は横浜GSフットボールクラブ・コブラに敗れた。前日の1回戦につづき、決勝点を決めたのは外池。あの外池大亮である。
 日立ビルシステムサッカー部は所属企業の理解を得、関東リーグで戦うことを目標としているという。その夢の舞台まであと1勝。しかし、外池擁する横浜GSフットボールクラブ・コブラが眼前に立ちふさがる。外池を抑えながら、リーグ戦で見せたようなムービング・フットボールで主導権を握り、得点することができるのか。
 注目の一戦は11月15日(土)11時、相模原麻溝運動公園競技場にてキックオフ。

(文・後藤勝)

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(写真・後藤勝)
タグ:関東社会人
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2008年11月07日

028【天皇杯4回戦】「格上相手だから出来ること」(第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦/11月2日/ジュビロ磐田 vs. 栃木SC/ヤマハスタジアム)

 天皇杯も4回戦まで進むとJ1チームが登場する。ここからはJチームが主役となり、元旦国立を目指す争いが本格的にスタートすることとなる。
 「本当の日本一決定戦」と大会公式パンフレッドに書かれている天皇杯全日本サッカー選手権大会だが、熾烈な優勝争い・残留争いをしているJのチームにとっては元旦国立よりも目の前のリーグ戦の勝利が重要だ。そのため、格下が相手となる4回戦では一部J1チームはJリーグの試合とはメンバーを入れ替えて天皇杯へ臨むことがある。
 先日行われた天皇杯4回戦ではジェフユナイトッド千葉と大分トリニータがリーグ戦とメンバーを入れ替えて試合に臨み、犬飼日本サッカー協会会長より苦言を呈されたという報道もある。だが、メンバーを入れ替えたのは千葉・大分だけではない。

 11月2日に行われたJ1所属のジュビロ磐田とJFL所属の栃木SCの試合でジュビロ磐田は直前のJ1リーグからスターティングメンバーを実に10名入れ替えて試合に臨んだ。チームはJ1残留争いの最中にあり、主力を温存したと言われても否定できないだろう。
 一方、格下の栃木SCは当日考えうる最強のメンバーで試合に臨んだ。

 主力を温存することは観客と大会の格に対して失礼だ。という意見もあるが、格下のチームからすればチャンスが増えることを意味する。JFLで調子の上がらない栃木SCにとってはチームが自信を取り戻す絶好の機会ともなる可能性がある一戦だ。


 J1で30節が終了時点で17位と自動降格圏内にいるジュビロ磐田にとって、最優先課題はもちろんJ1での残留。主力を温存しスターティングメンバーを大幅に入れ替えたものの3-5-2と、固定化されたフォーメーションをとった。
 一方の栃木SCは3日前に行われたガイナーレ鳥取戦と同じく、1トップの下に2人の選手を並べる1トップ2シャドーの3-6-1で試合に臨んだ。

 試合は前半、前線と守備陣とが間延びして中盤のプレッシャーをかけられないジュビロ磐田に対し、栃木SCは中盤で自由にパスを回してボールを支配。しかし、ボールは支配するもののジュビロ磐田の3バックを崩すことが出来ず、バイタルエリアの前でボールを動かし続けることは出来るもののゴール前で決定的な攻撃を見せることは出来ない。
 逆にボールは支配されるものの個々人の能力に勝るジュビロ磐田は固い守備からボールを奪い、前線の2トップ、中山雅史、カレン ロバートの個人技を中心に反撃を試みる。
 すると前半43分、ジュビロ磐田はFKからボランチ河村崇大がフリーで抜け出しヘディングでゴール。ワンチャンスをゴールに結びつける個人の強さを見せ、前半はジュビロ磐田の1点リードで折り返した。

 後半、先制したジュビロ磐田は前半よりも積極的な動きを見せ始め、中盤でのプレスを強めて試合の主導権を握る。劣勢に立たされた栃木SCだが、攻勢に出てDFラインを上げて来たジュビロ磐田の裏を突くことに成功。後半21分にDF山崎透がインターセプトから1トップ松田正俊とのワンツーからDFラインを抜け出した佐藤悠介へパス。佐藤はドリブルでジュビロ磐田守備陣を抜け出して冷静にゴールへ流し込み、同点に追いついた。
 劣勢の中での同点に沸き立つ栃木SCゴール裏と選手は逆転へ向けて士気を高めたが、その僅か3分後にカウンターから中山が体勢を崩しながらもゴール。更に後半27分にもカウンターから途中交代、太田吉彰にゴールを決められて試合終了。
 終わってみれば3-1でジュビロ磐田がJ1チームの貫禄を見せた結果となった。


 木曜日にガイナーレ鳥取との準加盟同士の負けられない試合を行い、中2日で試合を行った栃木SCのコンディションが万全でなかったことは確かだ。
 チーム全体として見れば、特に前半はジュビロ磐田には集中力に欠けるプレーも見受けられ、栃木SCの方が気持ちの入った試合展開を見せた。栃木SCのコンディション面が良ければ、前半はあるいは?という場面もあった。また、8日間で3試合をフル出場した3バックが試合後半に足が止まらなければ、結果は違ったものとなったかもしれない。
 だが、それとは別にここぞの勝負強さではジュビロ磐田が一枚上手であった。決定的な仕事をいかに正確にこなせるのかという選手個々人の能力は、コンディション以上の差があった。

 ここ数試合栃木SCの課題はゴール前での勝負強さだ。JFLでも中盤ではボールを保持できるものの、ペナルティーエリア内で勝負する動きは少ない。この試合の前半でも同じことが見えた。
 後半の得点シーンは相手のDFラインが上がった状態でのカウンターからの得点であり、ボールを保持して相手を崩した形ではなかった。

 JFLでの栃木SCは警戒される存在であり、相手は引いて守ることが多くカウンターから得点を奪うことは難しい。天皇杯4回戦のように、格上でも前へ出てくる相手に対しては得点を奪う力はあるだけに、いかに引いた相手からゴールを奪うのか?そこに栃木SCの課題が存在する。

(文・北沢耕一)

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栃木SCと苦楽を共にしてきたサポーターにとって、J1チームとの対戦は大きな意味を持つ。(写真・北沢耕一)
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2008年11月06日

027【JFL】「引っ張れ引っ張れ」(2008JFL後期13節/11月1日/横河武蔵野FC vs. 三菱水島FC/武蔵野市立武蔵野陸上競技場)

 今年のJ1リーグは面白い。上位も下位も勝点差が拮抗しており、4節を残してどのチームが優勝するのか?また降格するのか?予断を許さない。それと同じように、JFLの上位争いも目が離せない。
 Honda FCが頭一つ抜け出し優勝へ向けて足元を固めているが、準加盟チームによる4位以内を目指す戦いはこれからが本番となる。優勝チームが決まり、そこで一区切りつくのではないというのはJFLの新たな魅力と言える。

 今季は「4位以内」という準加盟チームのJ参入への成績面での条件確定したJFLだが、昨季より降格制度も固定化された。リーグ開催要項にある『JFL17位、18位のチームは所在地に属する地域リーグ(地域最上位リーグ)に自動降格し、全国地域リーグ決勝大会1位、2位チームがJFLに自動昇格する。また、JFLの16位チームは全国地域リーグ決勝大会3位チームと入替戦を実施し、その勝利チームがJFLとなり敗者チームが所在地に属する地域リーグ(地域最上位リーグ)となる。』というのがそれだ。
 平たく言えば18チーム中の下位2チームが自動降格。16位のチームについては地域決勝3位チームとの入替戦を行うというものだ。
 しかし、ここには準加盟チームの動向が関わってくるから複雑になる。

 JFLからJへ参入するチームが“0”の場合、要項どおりの「自動降格2チーム+入替戦1チーム」となるが、J参入チームが“1”の場合は「自動降格1チーム+入替戦1チーム」、J参入チームが“2”の場合は「最下位のみ入替戦」となり、J参入チームが“3以上”になると最下位でもJFL残留となる。
 つまり、JFLで下位のチームとしては準加盟チームにはなんとしても4位以内へ入って欲しいという状況が生まれる。

 JFLには「門番」と称されるJを目指さない強豪チームがある。その代表格はHonda FCだが、今季4位以内をキープし続けていた横河武蔵野FCも「門番」と言える存在だ。
 「門番」は準加盟チームにとって嫌な存在だが、それと同じ様に降格圏内にいる下位チームにとっても嫌な存在だ。11月1日の武蔵野陸上では、「門番」6位横河武蔵野FCと「崖っぷち」最下位三菱水島FCが激突した。


 今季はリーグ序盤より常に上位をキープし続けてる横河武蔵野FC。2003年にクラブチーム化したアマチュアチームで選手は働きながら夜に練習をしている。練習場は人工芝だがラグビートップリーグに所属する横河武蔵野アトラスターズや下部組織も練習で使用しており、全面を利用できるわけではない。
 そんなハンディを持ちながらも、前線からの全員守備でゴールを守り、手堅く勝点を積み上げて後期12節終了時点で6位。しかし、夏以降は調子を落としており、特に得点力不足は懸案事項となっている。

 一方、企業チームである三菱水島FCの選手はほぼ全員三菱自動車水島製作所に勤務しており、2交代制の工場勤務をこなしながら土のグラウンドで練習を行うというJFL屈指の厳しい環境でサッカーへの情熱を燃やしている。この試合でも岡山県からバスで10時間かけて移動しており、その環境に根を上げ辞めていく選手も多いという。そんな中でもJFLで戦うチームは、真の社会人チームと言える。
 だが、やはり環境面でのハンディは大きく、今季は29試合で3勝5分21敗の勝点14で最下位。

 共にサッカーに集中できる環境にいるとは言えないアマチュアチーム同士の対戦は前半、横河武蔵野FC優位の展開で進んだ。


 序盤からボールを支配した横河武蔵野FCだが、荒れたホームのピッチに足を取られて思うようにボールをコントロール出来ない。住宅街の中にあり、利用頻度の高い武蔵野陸上は秋になると芝がところどころ剥げてくることで知られており、「アウェイの洗礼」と言われることもある。
 10年前に比べれば良くなったとは言え、この試合ではボールを蹴るたびに砂が舞っていた。公式戦では7月19日以来となる武蔵野陸上のピッチに、両チームが苦しむこととなる。

 それでも地力に勝る横河武蔵野FCは前半40分、FW金子剛が一人で持ち込んでゴール。前半は横河武蔵野FCリードで折り返す。

 後半に入りなおも追加点を狙いたい横河武蔵野FCだったが、残留のために負けられない三菱水島FCが反撃。ボールを奪った後に全員で前へ出る姿勢で人数をかけて攻めると後半14分、右サイドバック三宅一徳のクロスをペナルティーエリア内でFW中川心平が落とし、走り込んで来たボランチ山下聡也が押さえの効いたボレーをゴールへ叩き込み、同点に追いついた。

 その後も守勢に立たされながらもGK永冨裕尚のファインセーブもありゴールを守りきった三菱水島FC。積極的な選手交代でゴールを目指すいつにもない積極的なベンチワークも見せ、隙を見ての反撃も折り混ぜながら1-1で試合は終了した。


 三菱水島FCは戦力的にも環境面でも劣ると言われながらも上位相手に好ゲームを見せた。1年間使われ続けたセンターバックの萩生田真也、坂口遥のコンビがここにきて落ち着きを出してきており、GK永冨も成長を見せているなど、試合の中で各選手のレベルアップが図られてきている。また、唐木航太や高卒2年目の田平謙が中盤の汗かき役となり、ボランチ山下の攻撃力が発揮させることに一役買っている。
 チームを取り巻く環境は厳しいが、「門番」横河武蔵野FCの足を引っ張りJFL残留へ向けて一歩前進。

 一方の横河武蔵野FCは17本と、三菱水島FCの6本に対して3倍近いシュートを放ちながらも1得点に留まり決定力不足を露呈させた。相手GKの好守はあったものの、課題を見せた試合だった。




 リーグ終盤に入ったJFLはHonda FCが王手をかけており、次節にも優勝の可能性がある。しかし、J参入を巡る攻防はここからが見どころ。中位がほぼ決定しているチームでも、準加盟チームとの対戦では選手の目の色が変わる。プレッシャーのかかる準加盟チームにとって、なくすものが無いアマチュアチームの勢いは脅威となるだろう。


 とは言え、リーグ終盤は毎年各チームの選手が来季を見据えてナーバスになる季節でもあり、それは試合のパフォーマンスへも影響を見せている。また、各チームも来季を向けての動きを始めており、横河武蔵野FC・ニューウェーブ北九州・SAGAWA SHIGA FC・MIOびわこ草津の各チームではセレクションの募集も始まっている。

 リーグ終盤の順位争いと来季への展望と不安が入り混ぜとなった狂騒状態も、残すところ4節となった。

(文・北沢耕一)
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2008年11月05日

026【JFL】「勝点1の価値」(2008JFL後期13節/10月30日/栃木SC vs. ガイナーレ鳥取/栃木県グリーンスタジアム)

 栃木SCが天皇杯4回戦へ進出したために日程を変更して行われたこの試合は、ともに日曜日の試合から中3日というタイトなスケージュールでの一戦となった。
 この試合を入れても残り5試合となったJFL終盤戦。Jリーグ準加盟が承認されている両チームの勝点差は4、得失点差は0と拮抗している。4位以内が条件となっているJ参入のために叩いておきたい準加盟同士の対戦は、平日にも関わらず2,704名の観客を集めて19時にキックオフした。


 12節が終了した時点で3位の有利な立場にいる栃木SCだが、チームの状態は万全ではない。
 前期を首位で折り返しJFL代表として天皇杯出場権を獲得した栃木SCだが、7月19日の後期第4節流通経済大学戦から勝利に見放されている。10月12日に行われた天皇杯3回戦ではそれまでの4-4-2を3-5-2と改め、J2ロアッソ熊本に勝利。
 浮上のきっかけを掴んだように見えたがその後のリーグ戦では2戦続けての引き分けと、未だトンネルから抜け出せていない。

 それまで取り組んでいた4-4-2を捨ててのシステム変更は各選手のマークがはっきりすることで守備の安定に繋がったものの、攻撃の核となるMF佐藤悠介をボランチに下げる結果となった。そのため、守備の安定と引き換えに攻撃の起点が下がり、攻撃のバリエーションが減る結果に繋がった。
 如何に3バックで守備の安定を図りつつ佐藤悠介を前線近くまで持っていくのか?柱谷幸一監督はガイナーレ鳥取戦でその問いに対する答えを3-6-1という再度のシステム変更で見せた。
 ボランチを「守備の鴨志田」と「展開力の落合」どちらかに任せるのではなく、2人を同時に並べることによって佐藤をよりゴールに近い位置に配置。1トップの松田正俊のポストプレーを起点とし、佐藤と小林成光の2人に攻撃の組み立てが託された。


 一方、12節終了時点で5位と追う立場のガイナーレ鳥取は調子を上げてきている。
 ゴールデンウィーク明けまでの10試合で3勝1分6敗と、一時期は4位以内が大きく遠のいたものの、その後は上位チームの息切れもあり順位を上げてきている。とはいえ、順位浮上に繋がる大事な一戦をたびたび落とし、財務面ではJリーグから問題を指摘されるなどJ参入へ向けて順風満帆とは言えない。
 しかし、秋になりヴィタヤ監督が「精神的な柱」と表する元日本代表DF小村徳男が怪我から復帰。また9月18日にJ1 FC東京から加入したボランチ鈴木健児などの新戦力により、ここにきてチーム守備が安定。
 新加入選手との兼ね合いから4-4-2から3-5-2、3-4-3と最適なシステムの模索は続いているものの、10月に入り3連勝と希望が見えてきた。

 この試合、チームは前節の横河武蔵野FC戦でも結果を出した3-4-3のシステムでこの試合に臨んだ。
 試合前、ヴィタヤ監督は「相手がシステムを替えてきて難しい。でも、両サイドを固めながらゴールを狙いたい。アウェイだし、最低でも勝点1を持って帰りたい」とコメント。このコメントどおり、ガイナーレ鳥取は固い守備を見せた。


 試合は序盤、ガイナーレ鳥取ペース。攻撃時は3-4-3となるものの、守備時はトップに田村祐基を一人残す5-4-1でゴール前を固めるガイナーレ鳥取。特にバックの5人が45.90mのピッチサイドに広がって両サイドに蓋をする守備に戸惑う栃木SCはボールを奪われ、カウンターからピンチを招いた。
 しかし、序盤のピンチをGK小針清允のセーブで凌ぐと、栃木SCは前半12分過ぎからミドルシュートで徐々に主導権を引き寄せる。さらに前半20分過ぎからは右サイドの岡田佑樹を中心に個人でのドリブル突破を図る。
 この個人技での打開に5バックで広く薄くラインを構築するガイナーレ鳥取守備陣が受身に立つと、主導権は完全に栃木SCへ。

 前半30分からはほぼ栃木SCのワンサイドゲームとなると前半35分、CKから松田が押し込みゴール。一旦相手GKが触ったボールに喰らいついた松田の開幕戦以来となる今季2ゴール目で栃木SCが先制した。
 1点を奪われた追うガイナーレ鳥取だが、前に出ることなく、あくまで守備に重点を置いて前半を終了した。


 ハーフタイムに選手交代で1トップ2シャドー気味に前線のシステムを入れ替えたガイナーレ鳥取は後半開始から攻勢に出る。
 後半2分に奪ったボールを素早く前線へ運んだガイナーレ鳥取は左サイドへ開いた小井手翔太からのクロスを田村が頭で合わせて同点。
 その後も前半よりも両サイドが高い位置に陣取るガイナーレ鳥取。両サイドが高い分リスクはあるものの、前半よりも前へ出る姿勢を見せるガイナーレ鳥取とその裏を突こうとする栃木SC。後半は両チームによるサイドの攻防を中心に互いに攻め合いつつもゴールを奪えず、試合は1-1で終了した。


 ヴィタヤ監督自身が「今年は多い」と口にする弱点であるセットプレーからの失点はあったものの、後半はプラン通りに点を返してアウェイで勝点1を手にしたガイナーレ鳥取。
 一方の栃木SCは佐藤をより攻撃的な位置におき、相手の5本の倍以上となる13本のシュートを放ちながらも追加点が奪えなかった。

 共に勝点1を分け合った両チームだが、上位チームとの直接対決を終えている好調ガイナーレ鳥取と、後期16節にファジアーノ岡山との直接対決を残している不調栃木SC。
 同じ勝点1でも、チームに与える心理的な価値には差がある。




 残り4節となり、J参入条件の4位以内にHonda FCが入ってくることが確定している今季のJFL。
 栃木SC、ファジアーノ岡山、カターレ富山、ガイナーレ鳥取の4チームのうち、4位以内に入れるのは残り3チーム。必ず1チームが5位以下となるサバイバルが始まった。

 数字の上では勝点55に栃木SCとファジアーノ岡山、勝点54にカターレ富山。そして勝点51にガイナーレ鳥取となっており、ガイナーレ鳥取が不利な状況だ。
 だが、ここからは数字上での差以上にチーム状態が試合結果に表れる。
 現在の順位は関係無い。リーグ終了後に何位にいるのか?それだけが問われる本当の戦いは、これからが本番だ。

(文・北沢耕一)
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