2008年10月13日

021【天皇杯3回戦】「ここから全国へ」(第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦/10月12日/湘南ベルマーレ vs. 松本山雅FC/平塚競技場)

 天皇杯はJチームの最大の魅力はジャイアントキリングだと言われる。昨季はHonda FCが準々決勝でJ1王者鹿島アントラーズと延長戦までもつれ込む好ゲームをした。今季の天皇杯ではどのクラブがジャイアントキリングを見せるのか?10月12日に行われた3回戦の注目点の一つはそこにあった。

 松本山雅FCは北信越リーグ1部に所属するチーム。2001年、長野県松本市に建設された松本平広域公園総合球技場(通称、アルウィン)をホームスタジアムとし、Jを目指すチームだ。昨季リーグで優勝し地域リーグ決勝大会へ駒を進めたものの、予選リーグで敗退。今季は監督にHonda FC、FC琉球で指揮をとってきた吉澤英生を向かえて新たなスタートを切った。しかし、リーグ序盤からチームは一つになれず4位でリーグ戦を終了。
 北信越リーグ代表として地域リーグ決勝大会へ駒を進めることは出来なかったが、チームは後の無くなった夏以降調子を上げてきており、天皇杯県代表を勝ち取った。来週に控えた全国社会人サッカー選手権での地域リーグ決勝出場権獲得へ向けて良い流れを引き込むためにも、J2チーム相手に自分達の力を出し切りたい。

 一方、北信越1部という4部カテゴリーのチームを迎え撃つのは湘南ベルマーレ。長らく低迷が続いていたが、今季のJ2では第39節終了時点で3位と、J1昇格を射程に捉えている。昨季と違い、リーグ戦から1週間の間がある今季の天皇杯。J2はリーグ戦に臨むのと同じコンディション作りをしていけるだけに、北信越1部4位チームを相手にしっかりと勝利し、J1チームとの対戦権を獲得したいところだ。

 当日、午前中に別競技で使用されていたためにナイター開催となった平塚競技場。会場は前売り自由席券が完売と、盛況。メインスタンドのみの開放としていたために座席数が限られていたということもあるが、この完売にはアウェイとなる松本山雅サポーターが大挙押し寄せたという事情もある。
 J2チーム相手との真剣勝負に、地域リーグでは全国でも1、2を争う熱さを持った松本山雅サポーターのテンションも高い。


 試合は序盤、山内宏志主審のナーバスな判定から始まった。前半5分に早くも松本山雅DF三本菅崇がイエローを受ける。その後も選手が倒れる度に鳴らされる笛は、荒れた試合を予感させるものだった。
 ファーストシュートは松本山雅。昨季まで湘南ベルマーレへ在籍していたFW柿本倫明の無理な体勢からのシュートはゴールマウスを大きく外れたが、この試合に賭けるチームの意気を感じさせた。
 チャレンジャーとして気持ちの入ったプレーをする松本山雅だが、全体のテクニックやプレースピードは湘南ベルマーレが上。前半15分を過ぎた頃から松本山雅は湘南ベルマーレの想定内のプレーしか出来ず、攻撃は守備の網にかかり逆襲を喰らうシーンが増えてくる。
 前半23分には左サイドを突破した湘南ベルマーレMF加藤望からのクロスを前線まで上がっていたセンターバックのジャーンが繋ぎ、最後はFW原竜太が頭で押し込んで湘南ベルマーレが先制。

 先制されて厳しくなった松本山雅だが、後が無くなったところから本領を発揮。もともと元Jリーガーを多く揃え、選手個々人のポテンシャルは一定以上の水準にある松本山雅。2人の相手に囲まれた局面でパスを選択することなく勝負に出るようになるとそのポテンシャルが発揮させ始める。
 前半25分に個人の力で粘り強く左サイドを突破しクロスを上げるシーンを作ると前半26分、左サイドバックの阿部啄久哉が2人の相手の間を抜いて左サイドを突破しクロス。このボールを柿本が決め、松本山雅が同点に追いつく。

 組織力とゲーム勘に優れる湘南ベルマーレに対し、松本山雅の武器は勝利へ向かう気持ちと粘り強い個人のがんばり。人数をかけてきれいに得点した湘南ベルマーレの得点と個人のがんばりから得点した松本山雅。得点シーン一つとっても対照的な両チームだ。この松本山雅のがんばりが試合に反映されるようになった要因の一つに山内主審の笛がる。
 前半15分頃までナーバスとも言えるほど細かく笛を吹いていた山内主審だが、その後は接触プレーを流す傾向をしめし始めた。接触プレーを厭わずに粘り強くプレーする松本山雅にとって、この笛は悪意のあるプレーさえしなければ思い切ってプレー出来るという安心に繋がったことだろう。

 失点後も組織的にゴールを狙う湘南ベルマーレが試合の主導権を握り、粘り強くプレーする松本山雅が守備からの思い切りよい攻撃で反撃するという展開のまま、1-1で試合は推移。
 多くのチャンスを作りながらも決定機を決めきれない湘南ベルマーレはゴールが遠く、1-1のまま90分間は終了し、15分ハーフの延長戦へ突入。

 延長戦開始前、「夜9時以降の鳴り物は禁止されておりますのでご協力お願い致します。」という場内放送が流される平塚競技場。ドラムを中心に応援を繰り広げる松本山雅サポーターは手拍子を中心とした応援へ切り替えてチームの後押しを続行。一方の湘南ベルマーレサポーターは手拍子を中心としているだけに、それまで同様の応援を続けた。

 その後、試合は延長戦でも決着はつかずPK戦へ。お互いに6名ずつ蹴り合ったPK戦では松本山雅GK原裕晃が2本のキックを止めて松本山雅が勝利。
 攻められる場面が多い中でも120分間最後まで走りきった選手と、応援を絶やすことのなかった松本山雅サポーターはそれぞれの場所で歓喜を爆発させた。


 この試合は北信越1部チームがJ2チームに勝ったジャイアントキリングである以上に、盛り上がった。最後まで足を止めなかった両チーム選手の頑張り。選手と共に闘ったサポーター、そして序盤に厳しい判定を示しつつゲームをコントロールした山内主審。競技場に駆けつけた全員が作り出した雰囲気が試合を盛り上げたと言える。
 勝者の歓喜も敗者の落胆も審判団の冷静さも、全てがあっての天皇杯Match No.39湘南ベルマーレ vs. 松本山雅FCだった。


 敗れた湘南ベルマーレは気持ちを切り替え、J1昇格へ向けたリーグ終盤戦へ向かうことになる。
 一方、勝った松本山雅はいよいよ10月18日よりJFL昇格への長い戦いが始まる。全国社会人サッカー選手権、地域リーグ決勝大会の最大11試合の負けられない試合に向けて、この日の勝利はチーム・サポーター双方に大きな力を与えただろう。
 地域リーグで1、2を争うサポーターと共に、全国へ名乗りを上げた松本山雅の正念場は、これからが本番だ。

(文・北沢耕一)

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チームと共に全国の舞台で名乗りを上げた松本山雅サポーター。彼らが目指す本当の歓喜は、まだ先にある。(写真・北沢耕一)
posted by 3rdFlightFootball at 15:08 | TrackBack(0) | 天皇杯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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