2008年09月22日

010【天皇杯】「大人のサッカーと若者のサッカー」(第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦/9月20日/流通経済大学 vs. ソニー仙台FC/笠松運動公園陸上競技場)

 今回の天皇杯1〜3回戦用パンフレッドにはHonda FCと明治大学、2つのチームの特集記事が掲載されている。Honda FCはアマチュアチームとして、明治大学は大学チームとして、共に前回の天皇杯で活躍したチームだ。
 アマチュアチームとしてベスト8でJ1王者鹿島アントラーズと延長戦まで戦ったHonda FCが他のアマチュアチームに与えた影響は大きい。ソニー仙台FC、佐川印刷SC、TDK SC etc・・・多くのアマチュアチームが「目標はHonda FC」と口にし、Honda FC越えを目指してクラブ体質からの改善を模索している。
 また、明治大学は近年、有望高卒選手が多く流入する大学サッカー界の先駆けとして、昨年の天皇杯ベスト16で清水エスパルスとPK戦へもつれ込む接戦をした。明治大学に劣らない実力を持つと自負する他の大学チームにとって、自身の実力を示すには明治大学の成績は越えなければならない課題だ。

 Honda FCと明治大学。前回天皇杯で注目を集めた両チームを越えることを目標とする2つのチームが、2回戦で対戦した。


 ソニー仙台FCは今季からクラブの指揮を執る実行委員の佐藤弘幸の下、3年後にアマチュア王者となることを目指して3ヵ年計画のチーム改革に着手した。大卒の有望新人選手を中心にベテランやJからの助っ人まで総勢10名の新入団選手を向かえメンバーを一新。監督には「ソニー仙台FCの魂」とも言えるチームのOB、田端秀規を迎えてHonda FC越えを目指す。
 一方の流通経済大学は大学サッカー界では新興勢力だが、中野雄二総監督を中心として急速にその力を伸ばしている。200名を超える部員が日々切磋琢磨し、1年生から4年生までJクラブが注目する有望選手は数多い。特に今年の選手層は厚く、流通経済大学史上最強の呼び声も高い。中野総監督の「本気でベスト8を目指す」という発言で注目を集めているが、その言葉も決して虚勢に聞こえないだけの潜在能力がある。

 共にJFLに所属する両チームがJ2セレッソ大阪との挑戦権を賭け、笠松運動公園陸上競技場で戦った。


 関東へ接近した台風13号の影響も心配された1戦だったが、台風一過の晴天の中でのキックオフとなった。この日の笠松陸上は芝の状態が悪く、ところどころ芝が剥げているデコボコのピッチコンディション。加えて前夜の雨で芝が浮き、軸足の踏ん張りが利きづらい中での試合となった。

 試合は序盤、負傷者が続出し選手起用に苦しむ流通経済大学が攻勢に出る。前半14分にフリーキックからFW武藤雄樹がヘディングで合わせてゴールを割るも、オフサイドの判定。
 微妙な判定に救われたソニー仙台FCは直後から反撃を開始。高く設定されたDFラインからのロングパスを多用し、前線の経験豊富な高野和隆、本多進司の2トップでゴールを目指す。すると前半15分、ソニー仙台FCが立て続けに決定機を作ると前半18分、左サイドを抜け出した本多のクロスを走りこんだ高野がゴール。シンプルな攻撃から鋭く先制点を奪う。
 先制された流通経済大学は荒れたピッチコンディションに戸惑い、いつものパスサッカーが陰を潜める。だが前半30分頃からソニー仙台FCのDFラインが下がり始めると中盤でボールを持てるようになり、ボランチのMF千明聖典からの配球でペースを掴み始める。しかし、ここで流通経済大学にアクシデント発生。MF宇賀神潤が頭部を負傷しタッチライン外で治療を受けるとその間、いいリズムの中で1人少なくなった流通経済大学が攻撃の手を緩める。
 これでソニー仙台FCは息を吹き返し、0−1で前半終了。

 ハーフタイム後、ピッチへ姿を現した流通経済大学イレブンに対してスタンドで応援に回るチームメイトから激が飛ぶ。激の中心にいたのは天皇杯でメンバー入りを果せなかった4年生。試合に出られない選手の気持ちが、トップチームとして天皇杯へ出場する選手の背中を押す。
 それまでの4−4−2を3−5−2として、中盤を厚くした流通経済大学が後半開始から攻勢をかける。だが、前目にかかってきた相手の裏を突くように後半1分にソニー仙台FC本多がカウンターから追加点を上げる。
 早々に出足を挫かれた流通経済大学はその後積極性を失い、後半16分に宇賀神が個人技で1点返すも主導権を握れず。さらに選手は審判の判定にナーバスになっていき、チームのいきは上がらない。

 劣勢に立たされた流通経済大学に渇を入れたのは1年生のGK増田卓也。後半35分過ぎにソニー仙台FCのFW大久保剛志と接触し、あごを切る負傷を負う。ドクターが呼ばれる事態となったが、増田はその後試合に復帰。1年生の頑張りに、スタンドの声援が大きくなる。
 残り10分を切り、1点のリードを守って逃げ切りを図るソニー仙台FCに対して流通経済大学が反撃を開始。6分間のロスタイムが掲示された直後、FW船山貴之が同点弾を叩き込み土壇場で試合を振り出しへ戻して90分間を終了。15分ハーフの延長戦へと突入する。


 延長前半が始まると、それまでの守備重視から一変してしっかりした守備から得点を狙うソニー仙台FC。1点を守りに入った中でのロスタイムの失点に崩れるチームも多い中、ソニー仙台FCはきっちりと気持ちを切り替えて延長戦へと臨んだ。
 気持ちの切り替えを上手く行ったソニー仙台FCは延長前半13分、フリーキックで相手の意表を突くショートパス。そこからのクロスをMF麻生耕平が決め、2−3と再びリードを奪う。
 その後、時間を使い切ったソニー仙台FCが流通経済大学に攻撃を寄せ付けず、2−3で勝利。Honda FC越えを目指し、まずはJ2チームとの挑戦権を得た。


 試合は荒れたピッチコンディションを見極め、しっかりとした守備からのシンプルな攻撃を徹底したソニー仙台FCが、時間の使い方も含めたチーム一丸の意思統一で勝利。逆に流通経済大学はパフォーマンスが一定せず、ピッチコンディションが悪い中でDFラインからパスを繋いでいくサッカーに固執して勝利を遠のかせた。

 勢いに乗らせると怖い大学生を相手に、状況に合わせて大人のサッカーをしたソニー仙台FC。U-17代表経験を持つ大卒新人に目が行きがちだが、2トップの高野、本多やボランチの千葉雅人、センターバックの谷池洋平などのベテランが要所を締めてゲームをコントロール。
 3ヵ年計画初年度の今季は「チームの基礎固めのシーズン」だが、選手・ファンからの人望も厚い田端監督の下、今後の躍進に期待が持てる。

 一方の流通経済大学は若さが裏目に出た。怪我人が多く苦しいチーム事情だが、今週水曜日には関東大学リーグ1部を戦う。天皇杯2回戦で敗退し、その後の関東大学リーグでも失速した昨季の二の舞は避けたいだけに、気持ちの切り替えが急務となる。
 天皇杯ベスト8という目標は果せなかったが、ここで立ち止まる訳にはいかない。

(文・北沢耕一)

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試合後、ソニー仙台FC田端監督はハイタッチで選手を迎える。その姿からは、チームの天皇杯への意気込みが伝わる。(写真・北沢耕一)
posted by 3rdFlightFootball at 11:22 | TrackBack(0) | 天皇杯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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